- MRAMとは?今注目されている次世代メモリをわかりやすく解説
- Everspin Technologiesとは?MRAMを手掛ける半導体企業
- MRAMの仕組みとは?磁気を利用してデータを保存する
- MRAMの最大の特徴は「不揮発性」
- MRAMのメリット
- MRAMのデメリット・課題
- MRAMとDRAMの違いを比較
- MRAMはDRAMの競合になるのか?
- MRAMの将来性は?
- Everspin Technologiesの今後に注目したい理由
- Everspinの業績にも注目
- MRAM株「Everspin Technologies」の投資リスク
- MRAMは「次のHBM」なのか?
- MRAMの将来性を考えるときに注目したいポイント
- まとめ:MRAMはDRAMをすべて置き換えるのではなく用途拡大がポイント
MRAMとは?今注目されている次世代メモリをわかりやすく解説
半導体市場では、AIデータセンターの拡大によってHBMやDRAM、NANDなどのメモリ需要が高まっています。
一方で、メモリにはDRAMやNANDだけではなく、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)という技術もあります。
MRAMは、磁気を利用してデータを記録する不揮発性メモリです。
一般的なDRAMは電源を切るとデータが失われますが、MRAMは電源がなくてもデータを保持できるという特徴があります。
さらに、高い書き換え耐久性や低遅延などの特徴を持っていることから、産業機器、自動車、航空宇宙、防衛、データセンターなど、データの信頼性が重要な分野で利用が進んでいます。
この記事では、MRAMの基本から、MRAM関連企業として知られるEverspin Technologies、MRAMの将来性、DRAMとの違いや競合性について初心者向けに解説します。
Everspin Technologiesとは?MRAMを手掛ける半導体企業
Everspin Technologiesは、MRAMを専門とする米国の半導体企業です。
本社は米国アリゾナ州チャンドラーにあり、MRAMの設計・製造・販売を手掛けています。
NASDAQに上場しており、ティッカーシンボルはMRAMです。
Everspinは長年にわたってMRAMを商用化してきた企業で、Toggle MRAMやSTT-MRAMなど複数のMRAM技術を展開しています。
主な用途としては、産業機器、医療、自動車、航空宇宙・防衛、データセンターなどが挙げられます。
Everspinの主なMRAM製品
- Toggle MRAM
- STT-MRAM
- xSPI STT-MRAM
- データセンター向けSTT-MRAM
- 組み込み向けMRAM
特に注目したいのがSTT-MRAMです。
EverspinはSTT-MRAMをDRAMやSRAM、NOR Flashなどの用途に展開しており、従来のメモリをMRAMで置き換えることを狙っています。
MRAMの仕組みとは?磁気を利用してデータを保存する
MRAMの大きな特徴は、名前の通り磁気(Magnetoresistive)を利用してデータを記録することです。
DRAMやNANDなどのメモリは、基本的に電荷を利用してデータを扱います。
それに対してMRAMでは、磁気トンネル接合(MTJ)と呼ばれる構造を利用して、磁化状態の違いを「0」と「1」として記録します。
専門的な構造まで理解する必要はありません。
簡単に考えると、
「電源がなくても磁気の状態としてデータを保持できるメモリ」
と考えると分かりやすいでしょう。
MRAMの最大の特徴は「不揮発性」
MRAMを理解するうえで重要なのが不揮発性という特徴です。
DRAMは電源を切るとデータが消える
DRAMはパソコンやスマートフォン、サーバーなどで広く使われているメモリです。
しかし、DRAMは電源を切ると基本的に保存していたデータが失われます。
そのため、データを保持するためには電力を供給し続ける必要があります。
MRAMは電源がなくてもデータを保持できる
MRAMは磁気状態によってデータを保存するため、電源が切れてもデータを保持できます。
これがMRAMの大きな強みです。
例えば、突然の停電やシステム停止が発生した場合でも、重要なデータを保持できる可能性があります。
そのため、MRAMは「電源が切れてもデータを残したい」用途との相性が良いメモリです。
MRAMのメリット
① 不揮発性でデータを保持できる
MRAMは電源を切ってもデータを保持できるため、バッテリーやバックアップ電源に依存しないメモリシステムを構築しやすくなります。
② 書き換え耐久性が高い
MRAMは高い書き換え耐久性を持つことが特徴です。
頻繁にデータを書き換える用途では、書き換え回数が重要になります。
そのため、データロギングや産業機器など、繰り返しデータを書き込む用途との相性が良いと考えられます。
③ 低遅延が期待できる
MRAMはRAMに近いアクセス性能を持ちながら、不揮発性を実現できることが大きな特徴です。
この「高速性と不揮発性の両立」がMRAMの重要なポイントです。
④ 高い信頼性が求められる用途と相性が良い
航空宇宙、防衛、自動車、産業機器などでは、メモリのデータが失われることが大きな問題になる場合があります。
MRAMはこうした「データを失いたくない」用途でメリットを発揮します。
MRAMのデメリット・課題
もちろん、MRAMにも課題があります。
① DRAMやNANDほど大容量化が進んでいない
現在のメモリ市場では、DRAMやNANDが非常に大きな市場を形成しています。
特にAIサーバーでは、大容量のDRAMやHBMが大量に必要になります。
MRAMは高性能なメモリではありますが、現時点ではDRAMやNANDと同じような大容量メモリ市場を全面的に置き換える段階ではありません。
② コストが課題になる可能性がある
メモリは最終的にコストが非常に重要です。
DRAMやNANDは巨大な生産規模を持つため、用途によってはMRAMよりもコスト面で有利です。
そのため、MRAMが普及するには、単純に「性能が高い」だけではなく、コストに見合う価値を提供できるかが重要になります。
③ DRAMをすべて置き換えるわけではない
MRAMについて調べていると、「将来的にDRAMがMRAMに置き換わる」という話を見かけることがあります。
しかし、これは少し注意が必要です。
MRAMにはDRAMにはない強みがありますが、DRAMにも大容量化やコスト、既存の製造インフラなどの強みがあります。
そのため、現実的にはDRAMをすべてMRAMに置き換えるというより、用途によってMRAMとDRAMが使い分けられると考えたほうが分かりやすいでしょう。
MRAMとDRAMの違いを比較
| 項目 | MRAM | DRAM |
|---|---|---|
| データ保持 | 電源OFFでも保持 | 電源OFFで消失 |
| 分類 | 不揮発性メモリ | 揮発性メモリ |
| データ保存方式 | 磁気状態 | 電荷 |
| 書き換え耐久性 | 高い | 高い |
| 大容量化 | 課題が残る | 非常に進んでいる |
| 主な強み | 不揮発性・低遅延・高耐久 | 大容量・コスト・高速性 |
このように、MRAMとDRAMは似ている部分がある一方で、得意分野が異なります。
MRAMはDRAMの競合になるのか?
結論から言えば、MRAMは一部の用途でDRAMの競合になり得ますが、現時点でDRAM全体を置き換える存在ではありません。
ここはMRAMを理解するうえで非常に重要です。
MRAMがDRAMの代替候補になる理由
MRAMには、DRAMにはない不揮発性という特徴があります。
例えば、電源が切れたときにデータを保持したいシステムでは、DRAMだけではなくバックアップ電源などを組み合わせる必要があります。
MRAMを利用すれば、こうしたシステム構成を簡略化できる可能性があります。
Everspinは実際に、DRAMの代替を狙ったSTT-MRAM製品を展開しており、1GbのSTT-MRAMではDDR4系のインターフェースを採用しています。
それでもDRAMが強い理由
一方で、AIサーバーや一般的なサーバーのメインメモリとして考えると、DRAMには非常に大きな市場と製造基盤があります。
さらにAI向けではHBMの需要も拡大しています。
HBMはDRAMを積層して大容量・高帯域を実現するメモリで、AIアクセラレーターとの組み合わせで重要な役割を担っています。
この分野では、MRAMがすぐにHBMやDRAMを置き換えると考えるのは現実的ではありません。
むしろMRAMは、「DRAMではコストや電源保持などの面で不便な用途を補完するメモリ」として成長する可能性があります。
MRAMの将来性は?
MRAMの将来性を考えるときは、「DRAMを全部置き換えるか」という視点だけで考えないことが重要です。
むしろ、MRAMの強みが必要になる市場がどれだけ拡大するかを見る必要があります。
① 産業機器
工場の自動化や産業用ロボットなどでは、突然の電源断やシステム停止に備えてデータを保持することが重要になります。
MRAMの不揮発性や高耐久性は、こうした用途と相性が良いと考えられます。
② 自動車
自動車の電子化が進むことで、車載コンピューターや各種制御システムで扱うデータ量も増えています。
特に自動運転やADAS、電動化などの進展によって、信頼性の高いメモリへの需要が増える可能性があります。
③ 航空宇宙・防衛
航空宇宙や防衛分野では、長期間にわたって安定して動作することが求められます。
電源断後もデータを保持でき、高い耐久性を持つMRAMは、このような用途で価値を発揮しやすいメモリです。
Everspinは2026年にも航空宇宙・防衛分野でのMRAM採用に向けた提携を発表しており、256Mb PERSYST STT-MRAMをTeledyne HiRelのメモリ製品群に組み込む取り組みを進めています。
④ データセンター
MRAMはデータセンターでも利用可能性があります。
Everspinはデータセンター・エンタープライズ向けに、DDR4に近いインターフェースを持つ1Gb STT-MRAMを展開しています。
特に、データを保持しながら高速にアクセスしたい用途では、MRAMの特徴が活かせる可能性があります。
⑤ エッジAI
今後注目したいのがエッジAIです。
AI処理をクラウドだけでなく、工場設備、自動車、ロボット、IoT機器などの端末側で実行するケースが増えると、低消費電力かつ高速で信頼性の高いメモリが重要になります。
MRAMがこうしたエッジAI機器のメモリとしてどこまで採用されるかは、今後の成長を考えるうえで重要なポイントです。
Everspin Technologiesの今後に注目したい理由
EverspinはMRAMに特化した企業であるため、MRAM市場が拡大した場合に、その恩恵を受ける可能性があります。
特に注目したいのが、MRAMの高密度化と用途拡大です。
2026年にはEverspinが高信頼性xSPI STT-MRAMの64Mb製品について量産認定を完了し、128Mbや256Mbへ製品密度を拡大するロードマップも示しています。
また、Microchip Technologyとの10年間の製造契約によって、MRAMの生産能力を拡大する取り組みも進めています。
MRAMが一部のニッチ市場だけではなく、より幅広い組み込み機器やデータセンターなどに採用されるかが今後のポイントになります。
Everspinの業績にも注目
Everspinはまだ巨大半導体企業ではありません。
2025年の年間売上高は5,520万ドルでした。
一方、2026年第2四半期は売上高1,870万ドルとなり、前年同期の1,320万ドルから増加しています。
MRAM製品の売上高も1,530万ドルとなり、前年同期の1,110万ドルから増加しました。
ただし、2026年第2四半期のGAAPベースでは360万ドルの純損失となっています。
そのため、Everspinを見るときは「MRAM市場が伸びるか」だけではなく、売上成長が利益成長につながるかも重要になります。
MRAM株「Everspin Technologies」の投資リスク
① MRAM市場が想定ほど拡大しない可能性
MRAMには多くのメリットがありますが、実際にどこまで普及するかはまだ不確実です。
技術的に優れていても、コストや既存製品との互換性などが理由で採用が進まない可能性があります。
② DRAMやNANDとの競争
MRAMが普及するには、DRAM、SRAM、NOR Flashなど既存メモリとの競争があります。
特にDRAMやNANDは巨大な市場規模と製造能力を持っているため、MRAMがすべての用途で優位になるとは限りません。
③ 小型企業ならではの事業リスク
EverspinはMicron、Samsung、SK hynixなどと比べると非常に小規模な企業です。
そのため、大手半導体企業と同じような規模の設備投資や研究開発を継続することは簡単ではありません。
一方で、MRAMに特化していることは強みでもあります。
④ 株価の変動が大きくなる可能性
小型の半導体企業は、業績だけでなく、将来の市場拡大への期待によって株価が大きく動く場合があります。
そのため、Everspin株を見る場合は、MRAMの技術だけではなく、売上高、利益、キャッシュ、製品採用、顧客数なども確認する必要があります。
MRAMは「次のHBM」なのか?
MRAMについて調べると、「次世代メモリ」という言葉が出てくることがあります。
ただし、MRAMとHBMは役割が大きく異なります。
HBMはAIアクセラレーターなどに大量のデータを高速で供給するための高帯域メモリです。
一方、MRAMは不揮発性、高耐久、低遅延といった特徴を活かして、特定の用途で既存メモリを置き換えることを狙う技術です。
したがって、MRAMを「HBMの次に来るメモリ」と単純に考えるよりも、DRAMやFlashでは対応しにくい領域を狙うメモリと考えたほうが理解しやすいでしょう。
MRAMの将来性を考えるときに注目したいポイント
今後MRAM市場が拡大するかを見るなら、次のポイントに注目すると分かりやすいです。
- MRAMの大容量化がどこまで進むか
- 製造コストがどこまで低下するか
- DRAMやSRAMからの置き換えが進むか
- 自動車での採用が増えるか
- 産業機器・ロボットでの採用が増えるか
- データセンターでの採用が拡大するか
- エッジAIでMRAMが利用されるか
- Everspinの売上高と利益が成長するか
特に重要なのは、「MRAMの性能が高いか」ではなく「実際に製品へ採用されるか」です。
まとめ:MRAMはDRAMをすべて置き換えるのではなく用途拡大がポイント
MRAMは、磁気を利用してデータを保存する不揮発性メモリです。
電源を切ってもデータを保持できることに加えて、高い書き換え耐久性や低遅延などが特徴です。
そのため、産業機器、自動車、航空宇宙・防衛、データセンター、エッジAIなど、信頼性やデータ保持が重要な分野で活用される可能性があります。
MRAM関連企業として注目されるのがEverspin Technologiesです。
EverspinはToggle MRAMやSTT-MRAMを展開し、DRAM代替を狙った製品も開発しています。
ただし、MRAMがDRAMを全面的に置き換えると考えるのは早く、現時点では「DRAMでは対応しにくい用途をMRAMが補完し、一部の用途で置き換えていく」という見方が現実的です。
今後MRAMがどこまで普及するのか、そしてEverspinがどこまで売上と利益を伸ばせるのかは、次世代メモリを考えるうえで注目したいポイントです。
AIによってHBMやDRAMへの注目が高まっていますが、メモリ市場はそれだけではありません。
「高速・大容量のDRAMやHBM」と「不揮発性を持つMRAM」が、それぞれの得意分野で使い分けられる可能性があります。
メモリ株への投資を考えるなら、こうしたメモリ技術ごとの違いを理解しておくことも重要です。



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